ぼくの道

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boku 私が大注目している大阪の劇団、劇団銀河「ぼくの道」を見てきました。今回の作品は一人の作家の人生をたどりながら、児童虐待について描かれていました。今日のお気に入りは編集部員役の松林洋さん、浜木克行さん、大久保ともゆきさんのコミカルな3人組。元気で息ピッタリ、重いストーリーの中でちょっと空気を和ませる貴重なキャラクター・・・とっても楽しかったです。後は・・・大阪の組体操を教えてあげるというおじいちゃんのネタに大爆笑でした。全体的に役者の演技力は去年より上がったなぁ~って実感しました。ここはちょっと進化(*^o^*)

今回の作品に関しては、もう少し階段が見えて欲しかったかな?回想シーンが多いので余計に階段よりもドアが多く見えちゃう。あっちを覗き、こっちを覗きという印象。

私が思う作品の流れにとって大事だなぁ~って思うポイントはゴールが見えていても、そこへどう到達させるか?また、それをいかに踏み外さず、緊張感を持ったままゴールさせるかっていう点。昔読んだ中島らもさんの小説の中に、砂漠のど真ん中で追っ手に追われ、水溜りには虫が沸いていて飲めないし、限界ギリギリ・・・と、手に汗握る緊張感いっぱいのシーンがあったのです。さあ、これからどうなるのだろう?って思っていたら、あっけなくヘリコプターで迎えが来たんですよね・・・。あれは本当に肩透かしでした。ストーリー展開上、助けれることは判っているし、助けられなきゃそこで終わってしまう。だから「なんとかなるだろう」っていうゴールは見えていたのですよ。さあ、「らもさん」はどういう手法で切り抜けるのだろう?と思っていたら、どこでもドアで一気にゴールされちゃってねぇ(^^ゞ私が燃える・・・ワクワクする作品というのはゴールへ至る過程がどれだけ丁寧に踏み外さず描かれているか。サスペンスじゃない作品でも、ドキドキワクワク感ってありますよね。うわぁ~って思えたり、ドッと落ち込んだり・・・緊張感を保ったままの感情の起伏。SHIROHの後半みたいなね・・・あれは手に汗握りました。キリシタンの人たちの運命が綺麗に階段を転げ落ちて行くのが見えましたから。全体を通してのリズムも重要かな?本を読んでいる時もそうだけれど、やっぱり物語の持つリズムや息が合う作品というのは気持ち良いものです。でも、これって結構難しいことなんでしょうね。シーンの微妙な長さや、台詞の調整って。あとは、ちょっとした「やられた感」があれば最高。これがあるのと無いのとでは雲泥の差。やられた感の代表作は映画「ニューシネマパラダイス」。一人の少年と映画技師との交流の話なのですが、映画技師が大人になった少年に遺した1本の映画が私にとって「やられた感」の極地。複線がここで生きてくるのかぁ~と、感動の渦でした。そうそう、この「ニューシネマパラダイス」も通常版っていうのかな?と完全版があるのです。私はダントツ通常版が好き。完全版の方が物語の先まで描かれているのですけれど、これが長い!感動させてからが長くって・・・。これは今年公開されたレオナルド・ディカプリオの「アビエイター」も同じ。これは別に通常・完全分かれているわけではないし、ハワード・ヒューズの人生は続くから仕方ないのですけれど・・・。飛行機が落ちて「どうなるの?!」ってものすごい緊張感を持たせて盛り上げて、あっけなく生還してからが長いのですよ。観客の緊張感が解けちゃって・・・なんだかトイレ休憩が許される空気が流れましたから。

緊張感と階段とリズム・・・ドアは最後の最後、バーンと開けて「やられた!」って思わせるのが1枚あればいいなぁ~。今回の公演・・・どこでもドア的な一気ワープはなかったのですが、階段が薄いので、後から考えれば筋は通るんですけれど・・・なぜかそれが観ていて感じられなかったのがちょっと残念かな?役者のパワーはメキメキ進化の予感はしつつ、現段階では未知数ってところでしょうか?次回作に期待です。

私の反省点としては・・・この作品、回想シーンと現在が行ったり来たりなのですが、どうも混乱するというか、私この劇団はずっと観てきているのでキャストの顔と名前バッチリわかるのです。そうすると、つい、あっ、あの人があの役で・・・あっ、これもあの人で・・・なんてことになっちゃう。これは観ている私の見方が悪いんだろうなぁ~。ついつい役者個人を見ちゃうんですよね・・・。モーツァルト!なんかだと、井上芳雄さんらしいヴォルフガングだったり、中川晃教くんらしいヴォルフガングだったり。役者を通して登場人物の人生を見るのだから、そうなるものなのだろうし、それがやってる人たちの個性が発揮されているってことなのだろうけれど・・・これが、私の見方になっちゃってるんですよね。先入観無く観たいけれど、ファンになって数多く見ているうちに、先入観どころか・・・色んなことが見えすぎて来ちゃう。プラス、マイナスわかる。今日はテンション低いなとか、元気そうだな・・・とか余計な心配もしちゃう。たとえば私が初めて観たとしたらどう思うのだろうか?まっさらになれる訳ないのに、ついそんなことを考えてしまいます。