-iPS細胞が支える くすりの研究- iPS細胞を使って「ホネ」の病気に挑む!

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iPS細胞とは、何かすごいものだけれど実際にはあまり詳しく知らなかったのですが、そりゃノーベル賞獲る訳だ・・・と、今更ながらに理解しました。本日は、そのiPSを使った骨の病気と創薬のお話をお伺いしてきました。

細胞というのもは、色んな役割を担っています。肝臓の中にある細胞は肝臓の機能に必要な役割を持っています。iPSで作りましたという心臓の細胞は脈打ってました!なので、他の役割に変化できないし、受精卵に戻すことができません。細胞にもバックアップ的に途中までの機能しか持たない細胞もあるのだそうですが、それも肝臓所属とか、心臓所属って感じで途中までの機能を持っています。真っさらの細胞ではありません。
でも、そもそもは受精卵という一つの細胞からスタートしたものです。そこに戻せる細胞を作ることが出来たら、何にでもなれる。もし真っ新の細胞を作ることが出来たら色々な細胞を作り出すことができるのではないか?という発想から生まれたのがiPS細胞だそう。
iPS細胞=induced Pluripotent Steam Cell(人工の何にでもなれる(多様性)の幹細胞)。

病気の研究をするにあたり、患者さんから細胞の提供があったとしても、一度役割を持った細胞は基本的に分裂しないので増やすことが出来ません。また、細胞を提供してもらうということが難しい病気もあります。そんな時に、人工的に同じような細胞を作り出すことができたら、たくさん作ってそれを使って実験や研究にどんどん活用できます。iPS細胞で作った病気の細胞(疾患特異的iPS細胞)にすでに世に出ている薬をあれこれ掛けてみて効果を見たり、体の外で病気の状態を再現することが出来ます。

軟骨無形成症という骨が作られない病気の研究も進んでいて、iPS細胞で作った細胞に薬を掛けたら正常な軟骨が出来たのだとか。そして、骨のでき方、ご存知でしょうか?まず軟骨細胞が出来て、そこに骨細胞が入って骨が作られるのだそう。軟骨とても大事です。人間の骨は206個あります。

さて、本日の先生は、整形外科のお医者さん。
まずは薬が出来るまでというお話があって、1医薬品を作るのに、基礎研究→非臨床試験→臨床試験→申請・承認→製造とざっと見積もって10年以上、200~300億円の費用がかかるものなのだとか。頑張って100歳に届くかどうかという人間にとって10年って長い。また、その金額を掛けて、全世界に1,000人いるかどうかという病気に対して研究をする製薬会社も稀有で、稀な病気ほど研究が進まないのが実情。
それが、iPS細胞を使うと人工的に病気の細胞をたくさん作って、すでに世に出てている別の病気の薬剤で効果のあるものは無いかを調べることが容易になり、早い治療や創薬に繋がるのだとか。他の病気で使っている薬なので安全性は確認されているので、該当する病気に対する用量の設定や有効性を調べるところからの治験で済むのでショートカットになります。

ヒトの遺伝子2万5千個の内のたった一つに異常があると、その遺伝子が作るたんぱく質に異常が生まれ、病気が発生します。現在、見つかっている遺伝病は約1万種類。
遺伝子解析して、どのタンパク質が病気を引き起こすのかを調べます。遺伝子の解析技術が進み、正常な細胞と異常な細胞の遺伝子の差を調べるのに要する日数はたったの3日間。その病気の細胞を作って、今、世に出ている薬剤を使ってみて治療効果のあるものが無いかを探すことが早い創薬、早い治療に繋がるのだとか。製薬会社の方によると、今、世に出ている薬で、病気のすべてに対応できるのではないかという話があるそうです。

FOP(進行性骨化性線維異形成症/Fibrodysplasia Ossificans Progressiva)という病気は、筋肉や筋、腱の中に骨が出来てくる病気です。この病気は階段状に進行していく病気で、筋肉などの中に前駆細胞が出来て、それが軟骨細胞になって、いずれ骨になるのだとか。

 

iPS細胞を使って、その病気の細胞を作りアクチビンAというタンパク質が病気を引き起こすことがわかり、それに作用する薬剤を探して、シロリムスという薬がヒットしたのだそう。ただし、このシロリムスは骨が出来るのを抑制することは出来ても、骨になってしまったものを消す作用はありません。今は2歳までにこの病気だと診断されることが多いそうで、近い将来、その段階で有効な薬が使えるようになったら、骨の生成が抑制できるかもしれないそうです。

そして、現在、iPSを使った創薬治験が始まっています。

 

1.「治験とはなんですか?」
候補薬が治験薬として国に認めてもらうために、健康な人は患者さんの協力によって効き目や副作用を調べる臨床試験です。
2.「治験と人体実験とは何が違いますか?」
治験は「本人の自由意思」に基づいて行われる「臨床試験」です。人体実験は本人の意思を無視して行われる実験です。
3.「二重盲倹比較試験とは何ですか?」
候補薬の効果を正確に評価するために、被験者を候補薬の群と、候補薬と同じ形の成分のない偽薬(プラセボ)の群に割付けて行われる試験で、参加者も医師も、参加者がどちらの群に割付けられたのかが、わからないようにして行われる試験です。

 

難病情報センター:http://www.nanbyou.or.jp/entry/54
京都大学iPS細胞研究所「CiRA」:http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/
ナレッジキャピタル「超大学」:https://kc-i.jp/activity/chogakko/