-iPS細胞が支える くすりの研究- iPS細胞を使って「筋肉」の病気に挑む!

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ナレッジキャピタルのiPS細胞が支える薬の研究シリーズの第2回。今回はiPS細胞を使って筋肉の病気の研究をされている先生のお話をお伺いしました。

今回も冒頭は、国際広報室の先生によるiPS細胞とはこういうものですよというお話から始まりました。

iPS細胞の利点としては

①いくらでも増える
②いろんな細胞になれる
③誰からも作られる
ということで、直接患者さんの細胞が使えたら良いのだけれど、患者さんから得た細胞は増やすことが出来ず、原因を調べるとなると調査用のサンプルがたくさん必要。それで原因がわかれば、次にそれに効く薬を探さなければなりません。また同じ状態の細胞をたくさん用意しなければならず、そうかと言って患者さんの体から直接採取すると良くない。そんな時、iPS細胞で作ると、同じ状態のものを大量に作ることができて、原因究明にも効果が出そうな薬剤を調べる過程でも、患者さんの体を痛めることなく一気に色々試すことが出来ているのだそう。

現在、ALSやアルツハイマー病の研究が進んでいて、アルツハイマー病には、ぜんそくとパーキンソン病とてんかんの薬を混ぜたもので効果が出ているそう。
また、そういった実験や研究が各所で出来るように理研バイオリソースセンターというものが出来ていて、病気のiPS細胞バンクのようなものが出来ているのだそうです。ここには300種類近い遺伝子由来の病気のiPS細胞が凍結保管されていて、日本国内で難病指定されている5割以上の病気に対応しているのだとか。大学や企業・研究機関がこの細胞を使って病気の再現や創薬や病気の仕組みの研究に役立てているのだそうです。

さて、本題、筋肉の病気。今回の先生は、名古屋の大学の医学部を出て大学病院で内科の臨床をされていたそうで、透析患者を診ていたのだそう。
透析というのは、血液中の毒素を抜くという対処療法になります。週に2回、長い時間をかけて血液を透析をしないと命に係わります。今回の先生は、透析患者の根本治療をすることができないだろうか?ということで研究の道に入られ先生でした。
最初は、ES細胞という受精卵を使った細胞を使う方法での研究をされていたのだけれど、iPS細胞が発表されて、そちらの研究に移られました。iPSの研究所に入られるまでを面白おかしくお話ししてくださいました。山中教授に直談判のメールをしたそうですよ。「来年から、そちらで研究させてくださいっ!」って。

ES細胞とiPS細胞の違いは、iPS細胞は形質の違いがわかっている細胞が作れることなのだそう。その例で出てきたのが、上記の写真で、プロ野球選手と歌手が結婚した例。ES細胞というのは受精卵なので、どちらかの形質、歌が上手い遺伝子を持つか、野球が上手い遺伝子を持つかがわからないものになるのだけれど、iPS細胞というのは他者の影響がないので、一個人そのまま、野球が上手いか歌が上手いかの形質がわかったものが出来るのだそう。

さて現在、先生がメインで研究されているのが、筋ジストロフィーという病気。これは筋肉が壊れていく病気で、遺伝子のX染色体(性染色体)にあるジストロフィン遺伝子にエラーがあるために発症します。
X染色体を2本持つ女性の場合は、一つにエラーがあってももう一つがカバーするため問題が無く、男性は発症する病気なのだそう。ただ、女性は、このX遺伝子をキャリアとして保有するので、将来生まれる子孫の男児にこの遺伝子の形質が伝わる可能性はあります。難病情報センターのサイトによると、4割は突然変異で発症していますが、それ以外は、引き継がれた遺伝子により発症しています。
筋ジストロフィーは筋肉が壊れていくので、歩行困難から呼吸困難へと病状が進行し、20代頃には人工呼吸器が無いと生命を維持できなくなる病気だそうです。


筋肉に刺激があると、 筋細胞内にカルシウムイオンを取り込むのですが、この病気持つ人は、細胞内のカルシウム濃度が増えすぎることで、筋肉を壊していくのではないかというということがわかってきたそうです。今は、効果のある薬を探すという段階まで来ているそう。いままでこの病気にはステロイドを使っていたが、それも歩行できる期間を2年延ばす程度の効果しかないそうで、新しい薬の早期創薬が期待されています。

現在、CiRAという京都大学のiPS研究所は武田製薬と共同研究をしていています。武田製薬は製薬会社なので、すでに他の病気で承認されている薬を試すための試料が揃っていたり、ロボットを使って同じ条件で一斉に薬を試す機械などもあって、一気に調べられる数が増えているのだとか。また武田製薬の薬の知識豊富な研究者とCiRAのiPS細胞の知識のある研究者が共に研究することで、早期創薬に繋がる可能性も高くなっているようです。

           

この回の終わりの質問コーナーで、マウスでの実験と人間の実験とは効果の差がないのですか?というような質問をされたのですが、やはりマウスは体が軽いのでジストロフィンに問題があってもわりと元気に動くのだとか。また、マウスに効いても人間に効かないということもあるそうで、安全性が確認されて細胞で効けば認可されるようになるようになれば良いのだけれど、まだ現在のところ動物で効果を見せないと認可が下りない状況にあるそう。
iPS細胞が誕生して10年。これからに期待です。